ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。
「マニラのカジノで破滅」したnoteで有名になったTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は30回。
今回は、カネに困ったまま新年を迎えそうな人のためのお話です。
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◆「時間」「身体」「信用」の大事さを後から知る
結局、何の犠牲もなく「無」から金を生み出すということはなくて、目に見えない形のものを売っている。時間であり、信用であり、リスクであり……。
例えば今の若い子で詐欺まがいの商売を手軽にやってる子は多いが、それだってある程度の逮捕「リスク」があるし、ある意味では自分を売っているのかもしれない。金を借りる行為は信用を売ることで、僕の場合、社会に対する信用はもう売り切れてしまって在庫がない。調べたところ、どうやら次の入荷は10年近く後らしい。
こうなってくると売れるものは「時間」と「身体」になってくる。労働の原点だ。誰がこの仕組みを最初に考えたのだろうか。金を生み出す装置を作った人がいて、そこに人をはめ込む人がいて、はめ込まれる人がいて、そういう風に世の中は回っている。
数年前、まだ働いていた時に副業でオレオレ詐欺の受け子(金の受け取り手)をして捕まった部下がいたが、そんな事をするタイプじゃなかった。最終的に何と天秤をかけたかはわからなかったが、「リスク」「信用」「身体」全部を売ってしまった。世間は、
「バカだな~」
と一蹴するだろうが、本当はもっと悪い人がいて、でもその人たちはもっと賢くて、捕まらないように「とりあえず金が必要な人間」の全てを買い取る。もちろん受け子自体は悪い。最悪だ。貧乏人の周りにはそんな賢い人が考えた悪い話が散らばっている。お腹を空かせた貧乏人は撒き餌に食いつき、サビキで釣り上げられる。
年末が近い。年の瀬はそういう「リスク」の転売屋が街の隅に増える時期だ。
貧乏人が信用されないのは、上記の理屈がかなり硬い糸で結ばれている事をみんなが知っているからだ。
◆相談するべきはどこか
よく「金が無いんだけどどうしたらいい」と相談を受ける。携帯代が払えなかったり、家賃が払えなかったり、悪い仕事を紹介してほしかったり。
冷静になれない気持ちはよくわかる。誰も彼も「こんなはずじゃなかった」はずだ。
ちなみに僕は貧乏だからか、よく悪い仕事を知っていると思われがちだが、昨今流行りの「アンダーグラウンドに詳しい系」ではないのでここに書いておく。もちろん夜の仕事もしていたし、多少見たことくらいはあるが、別にその世界で何年もやってきたワケではないし、そもそも根はビビりでガリ勉のオタクだ。この身体一つ、人生一本の制限の中で見てきたものしかない。
貧困の果ての果て、最後に頼るべきなのはどこか。頼れる人がいないのなら、それは「国」だろう。彼らは時に仕事もくれる。こんな貧乏人にもクソみたいに高い税金を払わせてるんだ、そりゃそうだろう。
◆貧乏人の味方、社会福祉協議会
やっぱり貧乏仲間のみんなには、出来るだけ正道を歩いて欲しい。
僕が今まで金が無い時に相談して一番良かったのは「社会福祉協議会」だ。ここには最後の手段が大量に残されている。僕は東京都から20万円借りれたし、携帯代を3か月延命する手続きが出来ることも知った。
彼らは僕たちが「正しい市民であるか」の確認をする前に相談に乗ってくれるから、説教なんかもされない。大人しく話を聞いてもらい、限りなく適切に近いアンサーを返してくれる。僕はここにすごい信頼を置いているし、どうせタバコ税を払うなら全額社会福祉協議会に払いたい。
当座の金に困った時は職業安定所(職安)に行くといい。新宿や上野、横浜の近くにもあったはずだ。
僕が今働いているのはここで、名前と身分証さえあれば働かせてもらえる。仮に運悪く住所が無くても大丈夫だったはずだ。有名な場所だと、東京では「山谷」、大阪では「西成」にあたる。
金が無いと周りが見えなくなる。焦りで頭がいっぱいになって逆に動かなくなる。とりあえず何も思いつかないなら社会福祉協議会に相談しながら職安で数万円を稼げばいい。
職安には色んな人がいる。ホームレスの人もいるし、年金暮らしで間に合わない人もいる。前科がある人もいれば同じ境遇の人と知り合って仲良くなる人もいる。
◆朝から昼過ぎまで働いて8,000円
職安でもらえるこの手の仕事は「特別就労対策事業」として、「都」が、「仕事が無い人」に向けて行なっている事業計画の一つだ。登録すると番号が振られ、頻度は自分の番号が回ってきた時だけなので一週間に1度か2度だが、朝から昼過ぎまで働くと約8,000円ほどもらえる。
バスに揺られ、例えば道路のゴミ拾いなんかをして、戻ってくると取っ払いで金がもらえる。月に4万弱とはいえ、当座の金を作るにはうってつけだ。背に腹は変えられないし、寝て待ったところで金は降ってこない。果報も来ないが。
僕はこの地域で仕事をするまで、こういうのは安く買い叩かれて時給200円で奴隷のように働くものかと思っていた。ネットを鵜呑みにして、
「ヤバい仕事は西成に行けばある」
という情報だけで向かったこともある。だけど実際には自治体が行なっている事業だから、たとえ安くても万が一に逮捕されたりするリスクはない。バイトの面接に10回連続で落ちた人でも大丈夫だ。
そこで出会った人たちに聞くと、昔は本当にヤバめの仕事も結構あったらしい。が、今ではドヤ街も整備され、街を軽く歩いて探せる仕事はここくらいだ。
◆気まぐれな大衆の顔をうかがう
朝の5時半に家を出て職安に向かう。バスで数十分揺られた場所で言われるままにゴミを拾い、終わったらまたバスで帰る。結構ちゃんと掃除をするから、トラックの運転手が捨てた弁当の袋なんかも回収する。
街でポイ捨てをする時は、植え込みの手前にわかりやすく捨てて欲しい。あと分別をして拾ってるから、缶は弁当の袋と別にして投げ捨ててくれ。
ニヤニヤしながらゴミをこちらに投げてくる人もいる。
「拾ってやったぞ」
と言いながら自分が飲んだ缶を足元に転がす。どついてやりたい気持ちになるが、ヘルメットとチョッキを着てるので我慢する。
大衆は気まぐれだ。
「今日は底辺に優しくしてやろうかしら」
と思えばホームレスや日雇い労働者の人権を謳い、テレビで税金泥棒と報じられれば、
「そんな奴ら生きてても意味がない」
と電話や街中で大騒ぎする。施すも施さないも、許すも許さないも「正しい市民」が全権を握っているようで、それを見る度にこちら側は特に期待もしない。その気まぐれの振れ幅が慈愛に傾いた時だけ、もらえるものはもらっておこうと思うだけだ。
もちろん本気で助けてやろうという人たちもいるので一概には言えないが、見てて思うのは大半が気持ちよく正義の槌を叩くために周りの様子を伺っているだけだ。
◆カイジの地下帝国
帰りのバスの中では何となく緊張がほぐれ、若い僕も段々と受け入れられていき、競馬の話なんかもする。ここでの共通言語のうちの一つだ。年代が離れている僕はこの話以外ついていけない。
正直この仕事だけではジリ貧だ。突然失職して年金で税金を賄えない人もいる。だがそれぞれが1人だ。
降りる時に「金を渡す人」が現れて、8,000円と小銭がいくらか入った封筒を渡される。
ああ、ちゃんとこうして、少ないとはいえ復活のチャンスが転がっているんだ。日本に生まれて良かった。
そう思った。
バスから降りて解散する。目の前に、街の風景に不釣り合いなくらい綺麗で大きなパチンコ屋が口を開けていた。カイジの地下帝国みたいだ。大槻班長の巧みな戦略を思い出す。
この街の人や経済は確かに回っている。だけど僕は許さない。
「あそこは出るから」
とバスの中で教えてくれた人と、打つ気もなかったのに5,000円も飲み込んだ“大海物語4”を……。〈文/犬〉
【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。
Twitter→@slave_of_girls
note→ギャンブル依存症
Youtube→賭博狂の詩

(出典 news.nicovideo.jp)
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